自社の風俗店で、姉妹店をオープンする際に選択肢となる「のれん分け」。
のれん分けは、一般的な飲食店に限らず風俗店でも積極的に取り入れられています。効率良く多店舗展開を図りたい経営者におすすめの手段です。
しかし、次のような境遇にあったり、疑問を感じていたりする方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、自社の風俗店をのれん分けするメリットとデメリット、需要やFCとの違いについて解説します。
また、のれん分けの正しい手順も理解することで、効率良く取り組めます。
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風俗の「のれん分け」は、自店舗の屋号やブランドの使用を認めて独立を支援する取り組みを指します。
内勤スタッフへの待遇として、のれん分けの制度を導入している風俗店も珍しくありません。まずはその需要やフランチャイズとの違いについて解説します。
風俗業界を取り巻く現状から鑑みて、のれん分けは一定の需要があることがうかがえます。
下記の警視庁が発表しているデータによると、2017年~2021年における性風俗関連特殊営業の届出数(営業所等数)の推移は下記の通りです。
出典:警視庁-令和3年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯の取締り状況等について
風俗店の新規出店を志すオーナーにとって選択肢となる業種は、風営法の関係で基本的にデリヘル一択となるでしょう。デリヘルは不動産を持たないため比較的開業の敷居が低く、実際に届出数の推移から見ても増加傾向です。
そして、デリヘルを含む風俗店は人口が多いエリアに出店した方が集客しやすいため、一部の地方都市を除き、顧客獲得の競争率は年々高くなっています。
のれん分けは、新規参入の壁が以前ほど低くない現状において、ブランド力を活かした姉妹店としてスタートできるという点で独立希望者から需要があるのです。
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比較 | のれん分け | FC展開 |
対象者 | 社内 | 社外 |
加盟金 ロイヤリティ |
免除や減額 | 通常通り |
展開難易度 | 中 | 高 |
のれん分けは、主に自社の風俗店で長年働いた従業員を対象としています。独立希望のある従業員に対し、自店舗の屋号を使用して姉妹店を経営することを認める制度です。
加盟金やロイヤリティは免除・減額とするケースも多く、その場合、財務的なメリットはフランチャイズと比べて減少します。
基本的には店舗の経営に関する知識やノウハウを会得している従業員が対象となるため、業務のマニュアル化や経営指導などの工数を抑えやすい傾向です。そのため、展開する際の難易度は比較的低いと言えるでしょう。
対して、フランチャイズは主に社外の第三者を対象とします。
一定の加盟金やロイヤリティを徴収し、自社のブランドや看板の使用を認めたり経営のノウハウを教えたりしながら事業を展開するというビジネスモデルです。
フランチャイズ展開は、加盟店が開業する際の支援やマニュアルの提供・経営指導・キャストの派遣など、様々なサポートをパッケージ化する必要があります。
また風俗業界のフランチャイズ市場は既に複数の大型グループが参入しており、加盟店獲得の競争率は高く、展開は容易ではないと言えるでしょう。
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こちらでは、自社の風俗店をのれん分けするメリットをお伝えします。具体的なメリットは以下の4つです。
デリヘル店でのれん分けを行う場合、効率的な事業拡大が可能です。
デリヘルは不動産が不要なため開業の敷居が低く、のれん分けは経営に関するサポートの工数を抑えやすい傾向にあります。
キャストや内勤スタッフのマネジメント能力が高く、集客・求人戦略の立案にも長けており、経営者としての視点がある優秀な従業員に姉妹店を任せることで、低コストでの事業拡大を目指せるでしょう。
▼風俗店の経営に必要な基礎知識は、次の記事で詳しく解説しています。
姉妹店を続々と展開することにより、知名度アップが見込める点もメリットです。
各店舗で提供するサービスの質を維持しつつ、ある程度のエリアに商圏を集中させれば、そのエリアにおける自社ブランドの向上も見込めるでしょう。
規模が大きくなるに比例して商圏エリアの顧客を囲うことができ、求人面ではエントリーが増えやすくなるため、結果的に競合の進出も拒めます。
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のれん分けをした各店舗から毎月ロイヤリティを徴収する場合、収益アップが見込めます。店舗数に応じて、その収益は拡大するでしょう。
ただし、のれん分けで姉妹店の経営を担うのは、基本的に自店舗の元従業員です。見ず知らずの他人ではなく、これまで自店舗の発展に貢献してくれた存在となります。
そのためロイヤリティを徴収するにしても、金額や売上に対する割合はフランチャイズと比べて低く設定するのが一般的です。
ロイヤリティが高すぎる場合、のれん分けの制度を利用して独立を希望する従業員は現れないでしょう。
また一方的に徴収するのではなく、必要に応じて本店からキャストの応援派遣をしたりホームページのリリースを手伝ったりするなど、姉妹店へのサポートも必要です。
ホームページの制作を外注する場合、代表的な業者としては風俗店に特化したWeb制作会社の『VOTEC』が挙げられます。
多店舗展開を行い収益の柱を複数作ることで、風俗店ならではの突発的な経営リスクを分散可能です。
具体例としては主に以下の事象が挙げられます。
経営店が単独の場合、これらの事象によって収益を大きく失うリスクがあります。
とくに後者による損失は大きく、再起を図るにしても人材をまた一から確保し、離れた顧客を取り戻さねばなりません。長期の営業停止命令は廃業とほぼ同義です。
対して姉妹店があった場合、エース級のキャストが退店した際でも商圏が近ければ応援の派遣ができ、営業停止による重大な損失リスクも分散できます。
のれん分け制度の導入は、従業員のモチベーションアップに寄与するかもしれません。
キャストや内勤スタッフなど、風俗店の働き手が抱く普遍的な課題として、キャリアアップの限界が挙げられます。
風俗というサービスの性質上、キャストは生涯現役として働き続けることは難しいものです。さらに歴が長くなるほど、異業種へのキャリアチェンジも厳しくなります。
そして内勤スタッフは基本的に、競争の厳しい出世という形でキャリアを広げなければなりません。そもそも出世の機会やポジションが少ない店舗もあるでしょう。
加えて内勤スタッフは自らが積極的に粗利を作り出すポジションではないため、店舗としても還元できる原資には限界があります。
上記のような「経験やスキルを積んでもキャリアアップの限界がある」という構造が従業員のモチベーション低下を招くのです。
対して、のれん分け制度がある風俗店の場合、働き手は独立という形で自らのキャリアを広げられます。現場で培った知識やノウハウを以て、キャリアアップの限界を克服可能になるのです。
のれん分けは、一定のデメリットも伴います。以下3つのデメリットも加味し、自社の風俗店をのれん分けするか検討しましょう。
姉妹店で展開する商圏が極端に近い、または同一である場合、意図せず顧客の獲得競争を招く恐れがあります。
のれん分けで自店舗と近しいエリアに似たようなコンセプトを掲げる風俗店の開業を許すのは、自らの手で競合を作り出すのと同義です。経営者の手腕次第では先方に既存顧客を持っていかれるリスクもあるでしょう。
自店舗と近いエリアに風俗店を開く際は不本意な競争を回避するべく、異なるコンセプトを掲げる店舗として、のれん分けをするべきです。
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のれん分けは、フランチャイズと比べてロイヤリティによる財務的なメリットが少ない点もデメリットです。
フランチャイズは社外の第三者に自社のノウハウを提供するため、ロイヤリティの利率は多少高く設定できます。また開業時に一定額の加盟金を徴収するというケースも珍しくありません。
対して、のれん分けは従業員の独立支援の意味合いが強く、高額なロイヤリティを設定しないのが一般的です。
のれん分け後の経営リスクとして、どこかの店舗で起きた不祥事が系列店全体のイメージ低下を招くという事態も考えられます。
さらにメディアやSNSで不祥事の事実が拡散された場合、ブランドイメージの低下は免れません。内容によっては顧客離反や、キャストの退店が相次ぐといったリスクを伴います。
良くも悪くもブランドイメージが全体に波及するという点は、考え方によってはデメリットと言えるでしょう。
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こちらでは、自社の風俗店をのれん分けする手順を5つのステップに分けて解説します。実際に制度の導入を進める際は、ぜひ参考にお役立てください。
まずは、どういった人物であれば自店舗の屋号使用を認めて独立を支援するのか基準を決めましょう。
対象が明確ではなく基準が曖昧であると、独立に向いていない人物を選定してしまうかもしれません。具体的な基準は各風俗店によって異なりますが、例としては下記のような基準が挙げられます。
ブランドの使用許諾、独立開業時の資金援助、キャストの応援派遣、集客支援など、のれん分けでサポートする内容を決めましょう。
制度の中身を具体的に示すことで、独立希望者を募りやすくなります。
自店舗が発展した成功要因を分析し、その環境を作り出すためにはどのようなサポートがあると良いかという視点でパッケージを組むのもおすすめです。
例えば、写真指名の予約が多いという風俗店の場合、パネル写真の仕上がりが良く、新規顧客の獲得が売上アップやキャストの定着に寄与したと考えられます。
パネルの質を追及し、レタッチを外注して競合にパネル負けしない店舗を作るといったサポートもおすすめです。
のれん分けでサポートするパッケージの中身を決めた後は、徴収する対価を決めましょう。具体的には加盟金の有無やロイヤリティの金額・利率です。
従業員の独立に際して、出店エリアの選定を行ったりホームページの作成を代行したり開業時のサポートを盛り込む場合は、加盟金を徴収しても良いでしょう。
ロイヤリティは下記のように、2種類の体系があります。
固定制 | 売上高を問わず毎月一定額を徴収 |
変動制 | 売上高に対する一定の利率分を毎月徴収 |
のれん分けに際して、本部と独立者でそれぞれ保有する権利や履行する義務については、書面に残す必要があります。決定したサポート内容やロイヤリティなどの条件も契約書に落とし込みましょう。
いくら元従業員で信頼関係があると言っても、のれん分けを口約束だけで進めるのは厳禁です。後から経営トラブルに発展するリスクがあります。
のれん分け制度の内容が決まり契約書の準備もできた後は、社内に向けて公表し独立希望者を募ります。
また、募集開始当初は名乗りを上げなくても「将来的には独立願望がある」という従業員がいるかもしれません。
日頃から各従業員と十分なコミュニケーションを取り、のれん分け制度があることも伝え、希望があれば独立を見据えて一定のポジションや裁量を与えましょう。
多忙でなかなか従業員と接する時間を確保できないという方は、自身が現在抱えている業務の無駄を削減できるポイントを探ってみましょう。例としては、以下のような事柄が挙げられます。
多店舗展開の手段は、のれん分けだけではありません。既存店を買い取る(M&A)という手段もあります。
M&Aは相応の資金が必要であるものの、ソープや箱ヘルといった店舗型風俗店で多店舗展開したい方におすすめです。
店舗型は新規出店が困難であるため、のれん分けで出店できる場所を探すよりも、既存店を買い取った方が手っ取り早いでしょう。
ただし、M&Aは業者を仲介するのが主流です。取引時にブローカーが噛むことで紹介料が発生し、費用が予想以上に膨れ上がる可能性もあるので注意しましょう。
▼風俗店の売買(M&A)に関するメリット・デメリットは、こちらの記事で詳しく解説しています。
自社の風俗店をのれん分けする5つのメリット、3つのデメリットは次の通りです。
メリット |
・効率的に事業規模を拡大できる ・多店舗展開による知名度アップ ・ロイヤリティによる収益アップ ・風俗店経営のリスクを分散可能 ・従業員のモチベーションアップ |
デメリット |
・不本意な顧客獲得競争 ・FCと比べてロイヤリティが低い ・不祥事が全体のイメージ低下を招く |
風俗業界を取り巻く以下の現状から鑑みて、のれん分けは独立希望者による一定の需要があり、主に自店舗で長年働いた従業員を対象としています。
対してFCは社外の第三者を対象としたビジネスモデルであり、ロイヤリティの金額や利率に差が出るのが一般的です。
なお、店舗型の風俗店はのれん分けが難しいため、ソープや箱ヘルで多店舗展開を図りたい場合はM&Aを検討しましょう。
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