風営法違反にあたる「名義貸し」。
風俗店経営者が逮捕された事案の中には、名義貸しが摘発の要因となっているケースが散見されます。
故意に行った経営者がいる一方で、自覚なく名義貸しに関する規制に抵触していたという場合も少なくありません。
過失による摘発を防ぐには、経営者が風営法を理解して正しく自店を管理することが必要不可欠です。
そこで本記事では、名義貸しについて詳しくご紹介します。
名義貸しの意味や罪の重さからはじまり、引き起こす要因や発覚するパターン、名義貸しを避けて風俗店を引き継ぐ方法に至るまで徹底的に解説。
正しい知識を身に付ければ、名義貸し経営が要因で摘発される事態を防げます。健全な風俗経営の参考になるので、ぜひご覧ください。
また名義貸しの自覚があり適法な形に軌道修正したい一方で、日々の業務が多忙で重い腰が上がらないという方は効率化システム/ツールの導入を検討しましょう。
まず初めに、そもそも名義貸しとはどういった行為か、その意味や仕組みを解説します。
「なんとなく知っている」という方も、目を通して正しく理解しておくと良いでしょう。
名義貸しとは、風俗営業の許可を取得した名義人が別の誰かに経営を任せる行為です。
経営としては、名義人と経営者が相違したまま営業をしている場合が名義貸しに該当し、名義人・経営者の双方が罪を問われます。
過去、名義貸しによって摘発された判例を見てみると、「主体者」「方針決定者」「経済的利益の享受者」「公租公課の負担者」といった点が判断基準として考慮されていることが分かります。
これらの対象者が同一でない場合は、摘発対象となる可能性が高いでしょう。
詳細は後述しますが、名義貸しでの風俗店営業は風営法によって厳しく規制されていて、非常にリスクが高い経営です。
名義を借りる側 | 名義を貸す側 |
・名義に対して責任を負わない ・信用がなくても目的が果たせる |
・対価として報酬を得る |
基本的に名義貸しは、名義を貸した相手から金銭や物品などの報酬を名義人が得る形で行われます。
名義を借りる側の視点からすれば、報酬を支払う代わりに名義を貸してもらうという形式です。
一見すると、名義を貸す側のみに利益がある構図に見えます。しかし、名義となっているものに対して発生する責任や義務は名義人が負います。
仮に事件や事故、金銭的なトラブルが生じた場合は、名義人が罪を償って逮捕されたり金銭を支払ったりしなければなりません。
名義を借りた側は、そういった責任を負う必要がないことが大きいメリットだと言えるでしょう。
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風俗店の名義貸しは風営法違反に当たり、発覚すれば逮捕され罪が課せられます。
本章では、名義貸しについて、風営法で規制されている行為や罪の重さを解説します。
風俗店の経営は、風営法に則っていなければなりません。
風営法とは、風俗営業に関する法律のことです。正式名称を「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」と言います。
名義貸しについて、風営法第11条には下記のように明記されています。
(名義貸しの禁止)
第十一条 第三条第一項の許可を受けた者は、自己の名義をもつて、他人に風俗営業を営ませてはならない。
引用:e-GOV – 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
つまり、風俗店の経営において営業許可を他人に貸す行為は、風営法で禁止されている違法行為。
他人名義での店舗経営は、取引先や投資家に対する詐欺行為に値し、風営法によって規制されています。
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貸した側 | 名義貸し(風営法第十一条違反) |
借りた側 | 無許可営業(風営法第三条違反) |
名義貸しによって罰せられる対象は、貸した側・借りた側の双方です。摘発された場合、風営法で最も重い刑罰が下ります。
貸した側には2年以下の懲役か200万以下の罰金のどちらか、もしくは両方。借りた側には「無許可営業」の罪として、貸した側と同じ罰が課せられます。
営業許可は、特定の条件を満たした者にだけ取得できるものです。
名義貸しは法で決められた条件を無視して経営を行うという風俗営業許可の根底を危うくする行為であり、犯した者には重い刑罰が下ります。
「営業許可を取得した名義人と共同経営をしている」という言い分ならば、名義貸しに該当しないように感じられます。
しかし、仮に風俗店が摘発された場合、共同経営を理由とした名義貸しの言い逃れは難しいと考えるべきです。
上記を裏付ける出来事がありました。2000年に大阪市で風俗店を営業する共同経営者が、名義貸しの容疑で摘発された事案です。
参考:裁判所 – 平成12年3月21日 風俗営業の名義貸しと風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(平成一〇年法律第五五号による改正前のもの)二六条一項に基づく風俗営業の許可の取消し
摘発された後、共同経営者は第一審で言い渡された営業許可の取消処分を不服に、同処分を取り消すよう求めて訴訟しました。
結果、最高裁の判決では被上告人の請求は認められないとして退けられています。
つまり、「共同経営」を理由に名義貸しはできないと考えて経営をすべきです。
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実際に、名義貸しによって摘発された風俗店の事例をご紹介します。
真偽は不明ですが、逮捕された容疑者が過失だと主張する事案もあります。同じ轍を踏まないためにも、確認しておくと良いでしょう。
▼違法メンズエステ店の逮捕事例はこちらの記事で詳しくご紹介しています。
無許可でキャバクラ店を営業したとして、警視庁は経営者と従業員の両容疑者を風俗営業法違反(無許可営業など)の疑いで逮捕し、18日発表した。
容疑者は「桜井野の花(さくらい・ののか)」名で活動する人気ユーチューバーで、美容整形やキャバクラ業界などに関する動画を配信している。
容疑者は2019年4月~21年2月、渚容疑者の店に風俗営業許可の名義を貸した疑いがある。
本件は、風俗営業許可の名義を貸し出した名義人と、名義を借りた経営者が無許可営業の疑いで逮捕された事例です。
表からは分かりづらい名義の貸し出しが発覚した理由は、別件で逮捕されたことがきっかけとなっています。
初めに逮捕された理由は、行政指導に訪れた警察官の立ち入りを拒否した行為が、風営法に違反に該当したからです。
名義の貸し出しは、その後の捜査によって発覚しています。
▼キャバクラ開業のコツや資金の目安についてはこちらの記事をご覧ください。
警視庁保安課は、営業禁止地域に、出店する店の賃貸契約で名義貸しをしたとして、風営法違反(禁止地域営業)幇助(ほうじよ)の疑いで、地方公務員・容疑者を逮捕した。
調べに対し、「中国人の女性に自分名義で借りた部屋を、1部屋につき3~5万円で貸していたが、風俗店に使うとは知らなかった」などと否認しているという。
本件の容疑者は、他人へ貸し出した賃貸が風俗店の営業に使用されていたことから、名義貸しに該当して逮捕されました。
真偽は不明ですが、風俗店に利用されているとは知らなかったと容疑を否認しています。
仮に自分名義のものを他人に委ねた場合、自分の意志とは関係なく法律に抵触する行為に使われてしまう可能性があることを頭に留めておきましょう。
中国人経営の違法風俗店に名義貸しをするなどして、経営を助けたとして、警視庁は、風営法違反(禁止区域営業)ほう助の疑いで、埼玉県内のマッサージ師を逮捕しました。
調べによると、容疑者は首都圏の違法個室マッサージ店など60店以上の風俗店に名義を貸し、経営者になる等し、名義人契約で約1400万円を得たのことです。
本件で容疑者が名義を貸し出した店の数は60以上にも及び、対価として1,400万円の利益を得ています。
風俗店経営を考えているのが周囲に漏れれば、お金稼ぎを目的に名義貸しを持ちかけてくる人が現れるかもしれません。
借りた側も刑罰が課せられる対象となるので、注意してください。
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▼風俗店の摘発事例やガサ入れされない店舗経営についてはこちらの記事をご覧ください。
風俗店の名義貸しに該当するケースを紹介します。
また一見該当しそうな経営でも、例外となるケースがあるので、それぞれの違いを理解しておくと良いでしょう。
風俗店の営業許可を取得した名義人と、実質的な経営者が異なっている場合は、名義貸しと見なされる可能性が高いです。
該当していれば、常に摘発されるリスクが伴う危険な風俗店。摘発されてしまえば、経営にかけた時間やお金などの努力が無駄になってしまうので、注意してください。
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先述した通り、共同経営であっても営業実態によっては名義貸しと見なされます。
共同経営の実態として、名義人がほとんど営業に関わらず、経営を指揮している人物が別に存在する場合は名義貸しと見なされる可能性が高いです。
実際にこういったケースで摘発された事例があります。
当人同士がクリーンな共同経営と認識していても、摘発対象となる名義貸しに該当するか否かを捜査して判断するのは警察です。
摘発対象とならないためには、警察の立場から見て名義貸しに該当しないよう経営しましょう。
名義人と経営者が不一致の経営は、基本的に名義貸しと見なされる可能性が高いです。
しかし、下記のような例外とされるケースもあります。
営業許可は申請人に対して認可しているため基本的に譲渡はできず、経営者自身が新規で申請を行う必要があります。
ただし、営業許可を取得した名義人が死亡した場合は例外です。
行政が相続人について調査し、問題がなければ相続という形で営業許可を引き継ぐことが可能。
相続以外の形式において、個人名義で許可を取得した風俗店を名義貸しにならないように引き継ぐ方法は後述します。
また、風俗営業の許可は、個人だけでなく法人としても取得できます。
その場合は法人が名義人となるので、代表者の変更や合併・分割などの会社における組織変更で、実質的に営業権を他人へ渡すことができます。
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本章では、風俗店で名義貸しが起きる3つのパターンを紹介します。
摘発対象となる名義貸しはどういった理由をきっかけに起きてしまうのか知り、自身の経営で引き起こさないようにしましょう。
摘発された前科がある場合は、他人に名義を貸りて経営を行う可能性があります。
なぜなら、前科がある人は自身で営業許可を取得できないため、風俗店を経営するには他人名義の営業許可を借りるしか方法はないからです。
▼風俗店とヤクザの関係性や健全店の見分け方についてはこちらの記事をご覧ください。
複数の風俗店を抱えている経営者は、自らが全ての店舗を管理するのは難しいため、店長を名義人として営業許可を取得させていることがあります。
また一方で摘発された際に、名義人である店長に責任を押し付けるのが狙いというケースも考えられるでしょう。
しかし、名義人の店長に経営権を任せていなければ名義貸しに該当し、経営者・店長の両者ともに罰せられます。
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名義人が退店する場合、新規申請を忘れたまま営業を続けると名義貸しに該当します。
風俗店を引き継ぐ際は、新規で営業許可を申請しなければなりません。
怠ったまま営業をしてしまうと、名義を借りた状態で経営していると見なされて摘発対象となるので、注意が必要です。
普通に営業していれば、名義の貸し出しは表面上分かるものではありません。そのため外部の人間や行政からバレないように思います。
しかし、名義貸しで摘発された風俗店は数多くあるのが事実です。
ではどういった経緯で発覚しているのか、本章では風俗店の名義貸しがバレる3つのパターンを紹介します。
一つ目は、別件で生じたトラブルがきっかけとなり、名義貸しが発覚するパターンです。
時間外営業や無許可営業などの風営法違反で摘発された場合、警察によって捜査が行われます。
他にも給与未払いや罰金で生じた従業員とのトラブルおよび、盗撮や本番行為の強要といったお客さんとのトラブルなどが刑事事件に発展した場合も同様です。
トラブルとなった事件の被害者が店側であろうがなかろうが、名義貸しが発覚すれば風営法違反として刑罰が課せられます。
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二つ目は、従業員による内部告発によって発覚するパターンです。
内情を知るスタッフや女の子が行政へ告発をして名義貸しがバレて摘発されてしまう風俗店は、意外にも多いとされます。
代表的なものでは、給与未払いや罰金徴収など様々な理由でお店と揉めて、恨みを持った従業員による告発が考えられるでしょう。
▼風俗店の女性定着率を上げる施策についてはこちらの記事をご覧ください。
3つ目は、営業許可を取得した名義人と税務申告上の名義人が一致していないことから、税務調査が行われて発覚するパターンです。
店舗の売り上げにかかる所得は、営業許可を取得した名義人に帰属します。
そのため、名義人である従業員が税務調査を受けた際、自分の所得にはお店の売り上げが加味されるのです。
経営者に頼まれて名義を貸しているだけの従業員であれば、税務署の調査結果に意義を申し立てるでしょう。
そうして名義貸しによる経営実態が明らかになった風俗店の実例もあります。
参考:元国税局職員の芸人による「実質経営者vs名義貸しの経営者では税金を納めるのはどっち?」
正しく手続きができれば、他人名義であった風俗店を引き継くことも可能です。
しかし、先述したように手続きを忘れてしまったり、正しくできていなかったりすると名義貸しに該当しかねません。
本章では、個人名義の風俗店を譲り受ける場合の、名義貸しに該当しない引き継ぎ方法を解説します。
確認して、摘発対象とならない健全な風俗経営を目指しましょう。
▼風俗店をのれん分けするメリットやデメリットについてはこちらの記事をご覧ください。
風俗店を引き継ぐ場合、後任のオーナーが新たに営業許可の申請を行う必要があります。
引き継ぐお店が、風営法で決められた要件を申請時に満たしていないと取得できません。そのため、申請する前に確認しておきましょう。
特に実店舗型の風俗店を引き継ぐ際は、場所的な許可要件に注意が必要。なぜなら、風営法が改正されたことで、新築する場所に関する規制が厳しくなったからです。
前オーナーが営業許可を取得したタイミングでは、図書館や保育園等の保全対象施設が近くになかったとしても、現在では建設されている可能性があります。
保全対象施設の調査を行った結果、場所的な要件を満たしていないにも拘らず現在営業できている実店舗型の風俗店は、風営法改正以前に建てられた既得権営業のお店です。
その場合は、店舗引き継ぎに際して後任オーナーが行う新規の営業許可申請が通らないため、引き継ぎができません。
一方で、デリヘルをはじめとする無店舗型の風俗は、場所に関する風営法の規制がありません。
申請者の前科の有無といった人的要件がクリアできていれば、新規の営業許可申請が通ります。
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▼デリヘルタウンの費用対効果や反響の出し方・おすすめの掲載エリアは下記の記事で詳しくご紹介しています。
調査の結果、引き継ぐお店が風俗営業許可の許可要件を満たしていることが判明したら、次のステップに移ります。
前オーナーが取得した営業許可を返納しましょう。
引き継ぎたいお店の営業許可が前オーナーに残っている状態だと、新規の営業許可申請は認められません。
そのため、申請前に返納手続きをする必要があります。
下記3点の書類を、前オーナーに所轄警察署へ提出してもらってください。
提出の期限は、前オーナーが廃業した日から10日以内です。
基本的に、引き継ぐ物件の賃借人は前オーナー名義となっているので、後任オーナーの名義で賃貸借契約を締結し直しましょう。
建物の所有者が承諾すれば前オーナー名義のまま後任オーナーが経営することは可能です。
しかしその場合であっても、名義は後任オーナーにしておくのがおすすめ。営業許可を含め、様々な書類上で店舗の権利関係が明確になります。
▼風俗物件の探し方や注意点についてはこちらの記事をご覧ください。
ここまでのステップが完了したら、いよいよ営業許可を申請します。
必要書類を集めて作成し、風俗営業許可を管轄エリアの警察署へ申請し、何も問題がなければ受理されるはずです。
受理された翌日から数えて55日後、晴れて風俗営業が許可されます。
摘発対象となる「名義貸し」について、風俗経営者なら知っておきたい知識を網羅的に解説しました。
名義貸しがバレるのは主に「別件のトラブル」「内部告発」「税務申告上の名義人不一致」の3パターンが考えらるでしょう。
罪の重さとしては風営法で最も重い刑罰が下り、名義を貸した側・借りた側の双方が摘発されます。
名義貸しを避けて風俗店を引き継ぐ方法は、下記のステップです。
名義貸しは風営法で禁止されている違法行為です。本記事で紹介したように様々な経緯でバレるリスクがあり、対外的に隠し通すのは困難でしょう。
摘発されてしまったら、経営にかけたお金や時間などの手間が水の泡になるばかりか、スタッフや女の子をはじめとした関係者に迷惑がかかります。
そうならないためには、経営者がしっかりと風営法を理解していることが必要不可欠です。
また、風俗店の引継ぎを考えている方は、本記事で紹介した手順を参考にしてみてください。正しい手続きを踏んで、健全な風俗経営を目指しましょう。
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