ソープランドをはじめ、風俗店を経営する際には売春防止法や風俗営業法といった法令を遵守しなければなりません。法令違反の証拠が揃えば、警察は摘発に動きます。
一方で、ソープランドには「男女の自由恋愛が起こり得る」という通念があります。しかし「自由恋愛の行く末に関してお店側はノータッチ」というのは、法令違反による摘発を回避する理由として不適当です。
この記事では、一部のソープランドが摘発される理由や事例・対策について解説します。
この記事で分かること |
・ソープランド摘発で経営陣が逮捕される理由 ・売春防止法違反の摘発対象 ・近年摘発されたソープランドの事例5件 ・摘発回避の理由として「自由恋愛」は不適当 ・摘発されないソープランドを経営する方法 |
「なぜ自由恋愛が摘発回避の理由に適さないのか」「どうすれば摘発されないソープランドを経営できるのか」など、店舗経営に携わる方が知っておいて損はない情報もまとめました。ぜひ最後まで目を通してみてください!
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ソープランドが摘発される理由は、主に売春防止法違反です。
「ソープランド=いわゆる本番行為の提供が認められている業種」ではありません。そもそも本番行為は売春防止法や風俗営業法(風営法)で禁止されています。
▼新規出店が困難なソープランドの開業方法は以下の記事で詳しく紹介しています。
金銭のやり取りが発生した性交は、「売春」に該当します。
総務省管轄の行政情報のポータルサイトe-GOV(イーガブ)法令検索で、売春防止法の概要や規定を確認できます。
“第二条 この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。
第三条 何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。”
引用:e-GOV 売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)
売春防止法は、1956年(昭和31年)に制定された売春を規制する法律です。かつて政府公認の売春業であった遊郭をはじめ、赤線地帯・青線地帯は売春防止法により姿を消しました。
警視庁の風俗営業等業種一覧を確認すると、ソープランドは以下のように定義されています。
“1号営業 ソープランド
定義
浴場業の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業”
引用:警視庁 風俗営業等業種一覧
ソープは風俗業種の括りではあるものの、「個室にて異性の客に接触する役務」としか規定されていません。
対して、同じく店舗を構える店舗型ファッションヘルス(箱ヘル)や店舗を構えないデリヘルは以下のように定義されています。
“■店舗型性風俗特殊営業
2号営業 店舗型ファッションヘルス
定義
個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業(1号営業に該当する営業を徐く。)■無店舗型性風俗特殊営業
1号営業 派遣型ファッションヘルス等
定義
人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの”
引用:警視庁 風俗営業等業種一覧
ソープと他の風俗営業等業種とでは、業務の定義が明確に異なるのです。つまり、警視庁はソープでの売春や性的サービスの提供は認めていないということになります。
なお、手コキやフェラなどは「性交」に該当しないため、これらヘルスサービスを提供する箱ヘルやデリヘルは売春防止法に抵触していません。
売春防止法の摘発対象は、売春に直接関与した当事者ではありません。なお未成年者が売春を行っていた場合のみ、買い手(ユーザー)への罰則があります。
売春防止法違反の処罰対象 |
① 売春の勧誘や斡旋をした者 ② 騙したり脅したりして売春させた者 ③ 売春させることを目的に前借や利益供与した者 ④ 売春させる旨の契約をした者 ⑤ 売春が行われることを承知で場所提供した者 ⑥ 特定の場所に人を住まわせて売春業を営んだ者 ⑦ 売春目的の場所を提供する業者に資産提供した者 |
ご覧の通り、売春防止法違反の摘発対象は「売春する場所を提供した」「売春対象の女性を管理した」などと見なされる店舗側です。
なぜ、処罰対象が当事者ではないのでしょうか。その答えは売春防止法が制定された頃の時代背景にあります。
1956年(昭和31年)に制定された売春防止法は、売春者を搾取したり、売春行為を助長したりする者を処罰対象とした法律です。違反者は刑事罰に問われます。
そして1956年は、第二次世界大戦が終わって11年。戦後の混乱の中、生活に困窮した女性が仕方なく売春を選ぶこともあったでしょう。
売春防止法はこのような当事者を保護し、更生する目的で制定されました。
つまり「売春を行った女性は事情を加味してノーペナルティとするものの、売春自体は違法なので行為の助長に関与した業者は摘発する」という構図になります。
また、広告媒体に掲載する集客・求人内容も、場合によっては違法と見なされる恐れがあるので注意しましょう。
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こちらでは近年摘発されたソープランドの事例をご紹介します。
最も多い摘発事例は、先述した売春防止法違反の処罰対象である「売春が行われることを承知で場所提供した者」です。その他の法律違反が理由で摘発された事例もあるので、チェックしておきましょう。
“兵庫県警歓楽街総合対策本部と姫路署などは14日、売春防止法違反(場所提供)の疑いで、姫路市立町のソープランド「りんごの蜜」の経営者の男を現行犯逮捕した。逮捕容疑は、同日午後0時45分~1時15分ごろ、女性従業員が不特定の男性客と売春すると知りながら、同店の個室を提供した疑い。
「雇っている女の子と客を、売春営業させていました」と容疑を認めているという。”
引用:神戸新聞 – 店の個室で「従業員と客を売春させていた」ソープランド経営者逮捕 場所提供の疑い
本件は売春の場所提供容疑で経営者が現行犯逮捕された事例です。なお、同店は姫路市内に2店舗しかないソープ店の1つでした。
摘発後、同店のオフィシャルホームページはアクセス可能であるものの、予約に必要な店舗の基本情報や在籍女性情報・料金表といったコンテンツは全て削除されています。そのため現在、姫路市内のソープランドは事実上残った1店舗による独占状態です。
“売春に使われる場所を提供したとして、兵庫県警兵庫署などは5日、売春防止法違反(場所提供)の疑いで、神戸市兵庫区の歓楽街・福原にあるソープランド店「Infinity(インフィニティ)」の経営者と、同店のマネジャーを逮捕した。
同署によると、「客引きやスカウトなどの迷惑行為をしている店舗がある」といった苦情が寄せられ、同署が調べを進めたところ、同店での売春防止法違反の疑いが浮上したという。”
引用:産経新聞 – 売春場所の提供疑い 神戸・福原のソープランド経営者ら逮捕
同店の直接的な摘発理由は売春の場所提供容疑ですが、トリガーは別件です。売春防止法以外にも法令に抵触していたことから警察に苦情が入り、摘発に至っています。
客引きは風俗営業法(風営法)、スカウトは職業安定法(職安法)に抵触します。また、各自治体の迷惑防止条例にも違反する場合も。摘発に至るまでには、売春防止法違反以外にも様々なリスクがあります。
“福岡県警は9月18日、北九州市小倉北区船頭町3丁目のソープランド「バカラ」の経営者ら6名を売春防止法違反(場所提供)で逮捕したと発表した。
容疑者らは共謀して、2019年3月21日、4月19日、4月30日の3度にわたり、同店の女性従業員が不特定の利用客を相手に売春することを知りながら、利用客から料金を徴収し、女性従業員と利用客に同店の個室を使用させた疑いがもたれている。”
引用:NETIB-NEWS – 違法に売春場所を提供~北九州市のソープランド経営者ら6人逮捕
同店は部屋数が24部屋あり、吉原などの一般的なソープ店における3倍近くの広さを誇る大規模なお店でした。こちらの摘発理由も売春の場所提供容疑です。
ソープランド『バカラ』の摘発で警察が動いた背景には、一説によると店の収益が暴力団に流れていた可能性があったとされています。
本事例のように、別件の犯罪が行われていると見なされる場合でも売春防止法違反で摘発されるかもしれません。
▼風俗店とヤクザ(暴力団)の関係性は以下の記事で詳しく紹介しています。
“売春のための場所を提供したとして、警視庁は、ソープランド老舗「角海老グループ」の店舗の責任者、店長両容疑者と従業員の男3人の計5人を売春防止法違反(場所提供業)の疑いで逮捕し、26日発表した。”
引用:朝日新聞 – 「角海老」ソープ店の責任者ら逮捕 売春場所の提供容疑
角海老グループは、関東で数十店舗を展開する老舗の大手グループです。売春の場所提供容疑で摘発されたのは、葛飾区にある『亀有角えび店』の店長や男性スタッフを含む責任者ら5人でした。
同容疑で摘発される以前、お店側とトラブルを起こしていたお客さんが警視庁に相談していたとされています。
トラブルの内容は明かされていませんが、ネット上では「入浴料+サービス料の仕組みを客が知らず、苦情をあげたのではないか」などといった憶測が飛び交っています。
▼風俗店の顧客管理が経営に与える影響やおすすめのCRMは以下の記事で詳しく解説しています。
“ソープランドの売り上げの一部を除外し、法人税計約6900万円を脱税したとして、東京国税局査察部が法人税法違反容疑で、運営会社「オフイスL」と「Dホールディングス」、2社の実質経営者を横浜地検に告発したことが13日、関係者への取材で分かった。”
引用:時事ドットコム – ソープランド運営会社を告発 6900万円脱税容疑―東京国税局
この事例は売春防止法違反ではありません。脱税による法人税違反です。
上記のように、ソープランドは売春防止法違反以外でも摘発されるケースがあります。クリーンな運営・経営を行うように心がけましょう。
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もし売春防止法違反と見なされた場合、どのような流れで摘発が行われるのかチェックしておきましょう。
警視庁の風俗営業等業種一覧によると、ソープランドは性風俗特殊営業に該当します。しかし売春が認められている業種ではなく、性的サービスの提供も認められていません。
つまり警察側の認識を要約すると、「ソープランドで売春は行われていないハズ」ということになります。これが前提であるため、警察が現存するソープランドを闇雲に摘発するということはありません。
仮にソープランドで売春が行われた容疑が浮上した場合、警察は黙認するということはありません。
売春防止法違反の容疑で警察がソープランドの摘発に動く場合、「売春の行われた証拠が揃ったから」と言えます。
過去の摘発事例を鑑みると、店舗側と利用客のトラブルや、客引きやスカウトといった迷惑行為が摘発の発端になるケースは多いようです。
トラブルや迷惑行為の通報を受けた警察が調査を進める中で売春防止法違反の証拠が見つかり、摘発に至るという事例が目立ちます。
▼風俗店の摘発事例とガサ入れされないお店を経営する方法は以下の記事で詳しく紹介しています。
ソープランドについてネット上では、「浴場を訪れた男性と女性従業員が出会い、自由恋愛の末に性行為に至った=売春ではない」という旨の言い分も散見されます。
しかし、売春防止法違反でお店側が摘発された場合、この言い分は通用しないと考えるべきです。
上記を裏付ける出来事が、1986年(昭和61年)に宮崎県の風俗店経営者が売春法違反(場所提供)の容疑で逮捕された事件です。
「男性客と女性従業員は自由恋愛の関係にあり、性交の有無は知らない」という旨で、経営者は容疑を否認。原審の高裁が出した判決を不服として最高裁へ上告しました。
これに対して、最高裁は「店内で売春が行われていたのは明白。自由恋愛を理由にそれを認識していなかったという主張は無理がある」として、上告を棄却しています。
参考:裁判所 – 昭和61年10月1日 売春防止法一三条一項所定の「情を知つて」と確定的認識の要否
最高裁で「自由恋愛」は通用しないとう判例が出ている以上、摘発時の回避策を考えるのではなく、摘発されない店舗経営を目指すべきと言えるでしょう。
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自店舗が摘発されないためにも、以下の3つのポイントを確認しましょう。
風俗店が摘発される理由としては、売春防止法のほかにも公然わいせつ罪や、風俗営業法(風営法)、職業安定法(職安法)などの違反も上げられます。また、脱税も摘発対象です。
ソープだけにとどまらず、風俗店の経営に際しては、売春防止法以外にも守らなければならない法令があることを意識しましょう。
街中での客引きは風俗営業法(風営法)、スカウトは職業安定法(職安法)に抵触します。
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ソープランドの過去の摘発事例を鑑みると、利用客や近隣住民とのトラブルが摘発に発展している例が多く見られます。
法令に遵守した経営を行っていれば問題は起こらないと思われますが、第三者とトラブルが起こらないように心掛けましょう。
▼風俗店の経営に必要な基礎知識は以下の記事で詳しく紹介しています。
一部のソープランドが摘発される理由や、その事例・対策などについてご紹介しました。
ソープランドの摘発を防ぐためには、各種法令を遵守した経営が最善策です。
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